障害者同士でも旅行に行けるよ。
そう、言って車椅子の友人と計画も立てずに名古屋に行ったのはもう20年も前のことです。
私は車椅子の操作はホームヘルパー講座で触ったことがあるだけで、道路を押して歩行したことはなかったのですが、やればできる。と、変な自信だけはあったのです。
友人は、進行性の障害があり、その頃も手の指先が少し動く程度で、ほぼ全介助の状態でしたが、二人とも怖いもの知らずというか、変に自信たっぷりで、指定席も取らずに新幹線に乗ろうと、東京駅に行ったら時期が悪くて、満員。
どうしよう?と悩んでいたら車掌さんが、障害者用の個室が空いてます。と教えてくれたので、それに乗って行きました。名古屋へ。
個室だから、車内販売が来なくて、お腹が空いた。それ以外は快適。
そう思ったのはつかの間。
友人は食事もトイレも入浴も介助が必要だった。
私は、旅行の費用は全部出してくれる。という友人の申し出に、「いいよぉ。行こう行こう。と簡単に引き受けてしまったのだ。
浅はかだった。甘かった。
全介助の人間との二人旅は辛い。
私も疲れたけれど、未熟者の介助者に身を任せなければならなかった友人はもっと不安だったと思う。
あれから20年、友人は人工呼吸器の助けを借りて、ベテランから初心者まで何人もの介助者や、医療関係者に護られて自宅で生活している。
私は、ただそばにいて祈ることしかできない。
今日は、呼吸が苦しかったようで、ヘルパーさんが買い物に行く間、そばにいて欲しい。と電話がきたので、自宅に訪問した。
「ねぇ、小説は書いてるの」と苦しい息遣いで聞いてくる。
「書いてるよ。そのうちネタにしちゃうからね」
「いいよ。早く本出してね」
彼女が元気なうちに私の本が出ますように。無償で。
貧乏なんだからね、私は。
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